ただただダラダラ佇むダダイズム

知らざあ言って聞かせやしょう。

ミッフィー作者ディック・ブルーナに捧げるレクイエム

2月16日、ディック・ブルーナが亡くなったニュースが流れてきた。このニュースは俺にとっても悲しい出来事であだった。 

オランダ人であるディック・ブルーナはグラフィックデザイナーであり絵本画家だ。

日本ではミッフィーが有名だろう。子どもの時に読んだ記憶がある人も多いはずだ。キャラクターとしての人気も高い。サンリオのキャラクターだと思っている人もいたりするものだが違う。

実はこのミッフィーにはいくつかの名前がある。どれもふわふわのうさぎという意味だ。

「ナインチェ・プラウス」

ミッフィー・バニー」

「ふわふわ うさこちゃん

まずオランダやベルギーなどではオランダ語の「ナインチェ」という名前。そして英語圏ではおなじみの「ミッフィー」これは後に日本でも親しまれる名前となる。

それ以前に日本に入ってきた時の名前は「うさこちゃん」であった。

これは出版社の違いで今でも両方の本が発行され販売されている。福音館書店では1964年から出版。講談社では1979年から出版が開始されている。

本として売れているのは福音館書店の方だが名前の知名度でいえばミッフィー。これは本としてではなくてキャラクターグッズなどで定着していることから起こる現象のようだ。

福音館書店ではうさこちゃん

うさこちゃんのゆめ (ブルーナの絵本)

うさこちゃんのゆめ (ブルーナの絵本)

 

 講談社ではミッフィー

ミッフィーのゆめ (ミッフィーはじめてのえほん)

ミッフィーのゆめ (ミッフィーはじめてのえほん)

 

 俺も小さい頃に読んだ。みんなノンタンを読んでいたが俺はミッフィーが好きだった。なぜかは分からないがミッフィーに夢中。

まだその時にはミッフィーディック・ブルーナの作品だとしることもなかったが。

だが成長と共にミッフィーに触れることもなくなった。どこかでキャラクターとしてのミッフィーを見ても何も感じなくなっていた。

しかし俺はある所でこのディック・ブルーナの世界と再開を果たすことになるのだ。 

あれはいつごろだったかは忘れてしまったが俺は仕事に行き詰まりを感じていた。 当時はWEBだけでなく紙ものもやっていた。いわゆる印刷物だ。

もともと紙ものは得意ではなかった。自信もないので自分のスタイルもない。というか本当にやりたいのはWEBなのになんで紙物をやってるんだろう……生きていくために仕方ないか。みたいな部分も当時はあった。今ではそんなことは一切思ってないのだけれども当時は若かった。

そんな状態なので良い物はできるはずもなく大スランプにハマってしまっていた。紙もののデザイン本なども読んでみたが仕事が捗ることなく期日は迫るばかり。焦り始めればどんどん追い詰められていく。悪循環に陥っていたなあ。

とりあえずこんな時は気分転換に漫画でも読もう!と本屋に足を運んだ。もはや現実逃避をしようとしていたとも言える。

だが頭は仕事でいっぱいで漫画を読む気にもなれずに足は勝手に実用書コーナーへ。

そこに平積みしてあった本に目が止まった。

「ZWARTE BEERTJES」

タイトルはなんと書いてあるが読めないがみるかぎりは洋書のようなブックカバーでグラフィックデザインが数点載っている。

それを見た瞬間に、これだ!と感じた。

中身を見ると同じようなテイストのグラフィックがさらにたくさんの載っている。しかもどれも格好いいものばかりだ。こういうのがやりたかった。そういうイメージが見えてきたように感じた。

俺は値段を確認することなく本を持ってレジに向かった。正確に覚えていないが7000円程。

財布を見ると10000円が一枚。当時の俺には貯金も何もない。これを使ってしまえば残り10日(記憶が確かではないが結構な日にちがあった)を過ごさなければいけなくなる。

だがそれ以上にこの本が俺には必要だと感じた。そしてお金のことは気にせずに購入することを決めた。

本を持ち帰り貪るように読む。数々のグラフィックが俺を刺激しているのが伝わってくる。洋書かと思ったが日本語の説明も書かれている。だが説明よりもとにかくグラフィックを見ていた。

大満足だ。もうお腹いっぱい!という位になると。俺の頭はアイデアで溢れていた。こうなると俄然やる気も出てくる。デザートは別腹と言わんばかりにもう一度見てみる。今度は説明も読みながら。

まずは最初に書いてあった文章を読む。

過去に出版された中でも最も広範囲に及ぶ、私のペーパーバックデザインの集大成となるこの本が、若いグラフィックデザイナーたちや美術学校の生徒たちにとって、何かの手助けになることを願っています。

ディック・ブルーナ

出典:ZWARTE BEERTJES

この本は1人のグラフィックデザイナーによる作品集なのか。ディック?ディック・ブルーナ?あまり聞いたことのない名前だ。

そこで気になってインターネットで調べてみると、ミッフィーの作者が出てきた。あの時の絵本の作者?いやいや同姓同名の人だろと思って調べてみるとやはりミッフィーの絵本の作者その人のようだ。「ZWARTE BEERTJES」と本のタイトルを入力して確信できた。

この本がミッフィーを書いたディック・ブルーナの本であることなど知らなかった。グラフィックデザイナーだったこともこの時にはじめて知ることとなった。

まさかのミッフィーとの再会。というよりもディック・ブルーナとの再会。

しかも書いてある言葉がまた泣ける。「何かの手助けになることを願っています。」って。今まさに俺が助けられています。って本気で涙した。今でも書いててうっすらと泣けてきた。それほどまでに俺には感動的だった。

それからも何度も何度も読み返した。

この本に出会ってからは紙ものも好きになった。アイデアもたくさん出るようになった。まさに俺の人生を変えるほどの出会いだった。命の恩人(本)と言っても過言ではないだろう。

普段自分の写真はあげたこともないが今日は俺の愛蔵書を特別公開しよう。これがディック・ブルーナの「ZWARTE BEERTJES」のブックカバー。どれもミッフィー以前のディック・ブルーナの装丁デザイン。

ZWARTE BEERTJESこの本には1955年から1975年の間のデック・ブルーナの装丁作品が400ページ以上にも及び収められている。俺が持っているのは初版1刷。今販売している「ZWARTE BEERTJES」のブックカバーとは異なる。

ブックカバーを外すとこんな感じ。可愛らしいイラストはミッフィーの面影をうっすらと感じさせる。

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 2005年からはブックカバーが変更され 現在入手できる「ZWARTE BEERTJES」は下記のデザインになっている。私も現在のブックカバーのものをもう一冊購入予定なのだが、結構どこも品薄だったりする。今後増版の予定などは分からないが、欲しいという方は手に入れておいた方がいいかもしれない。

Zwarte Beertjes

※こちらはAmazon商品紹介からの画像。

 

「ZWARTE BEERTJES」は俺とデック・ブルーナの想いがたくさん詰まった本だ。ずっと苦楽を共にしてきた。

今でも部屋の一番見える所に置いている。本の内容もそうだが、本の存在自体がいつでも俺を支えてくれている。

これからもあなたの作品は子どもから大人まで多くの人に愛されつづけディック・ブルーナの名は永遠に輝き続ける。

心から哀悼の意を表します。

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